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BambooTracker FM3ch拡張モードについて

OPNシリーズ(YM2608、YM2203、YM2612など)には効果音モードと呼ばれる機能があります。効果音モードは、FM3chにのみ、オペレータ毎に周波数を制御できる機能で、BambooTrackerではこの機能を利用したFM3ch拡張モードがあります。FM3ch拡張モードを使用する事でチャンネル数を増やし、例えばディレイや和音等にチャンネルを割く事ができます。
(音色の表現力を犠牲にしてチャンネル数を稼ぐようなイメージになります。)

この記事ではFM3ch拡張モードの使用方法の説明と実際の活用例をいくつか紹介したいと思います。

本記事の執筆には、BambooTrackerの現時点の最新バージョンv0.3.5を使用しています。

FM3ch拡張モードとは

効果音モードを使用して、FM3chに対してオペレータ毎にチャンネルを割り当てることができるようになります。
FM3のチャンネルがFM3-OP1〜4の4つのチャンネルに分かれる事になります。

オペレータ毎にチャンネルを割り当てる事で、複数のボイスとして発音させる事ができるのですが、ボイス数はFM音色のアルゴリズムによって決まります。

基本的にはキャリアの数=ボイス数となり、ALG.4では2音、ALG.6では3音、ALG.7で4音となります。
(ALG.5も3音ですがモジュレータが共用の為、この用途としては使い難いので説明を省きます。)
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※ DeflemaskでYM2612音源を使用する際、同等の機能があります。(SEGA Genesis Ext.CH3)
※ 過去の音源ドライバではPMD、FMPなどで同等の機能が実装されていました。

使用方法

実際にFM3ch拡張モードを使用する方法を説明していきます。

メニューバー[モジュール] - [モジュール情報]を選択して、モジュール情報画面を表示します。
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BambooTrackerでは、1つのモジュール(ファイル)に複数のソングを持つことができます。デフォルトでは標準タイプのソングが1つ登録されています。ソング追加時に、標準か、FM3ch拡張かを選択することが出来ます。
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FM3ch拡張を選択して追加ボタンを押し、ソングを追加します。
(標準のソングが不要なら削除してしまっても良いです。)
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OKボタンを押した後、ソング選択で追加したソングを選択します。
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FM3chのチャンネル列がオペレータ毎4つに増えたパターン表示になりました。
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パターンの入力で注意する点

  • 直列同士のオペレータは同じノート(周波数)を入力する。

ALG.4の場合、OP1と2、またはOP3と4で同じノートを入力します。
周波数が変化するエフェクト(00アルペジオや01, 02, 03などのポルタメント)やビブラートも同じタイミングにする必要があります。

  • ボリューム制御はキャリアに対して行う。

ボリュームや音量に対するエフェクトに関してはキャリアに対して行います。
モジュレータに対してボリュームを変化させるとTL値が変化して音色自体が変わってしまいます。

  • 制作途中でソングモードの切り替えができない。

現時点のBambooTrackerでは、制作途中で通常のソングとFM3ch拡張のソングを切り替える事ができません。最初にどちらのモードを使うのかを決めておく必要があります。打ち込み終盤になってチャンネルが足りなくなり、拡張モードに替えようといった事が出来ないのでご注意下さい。

活用例

FM3ch拡張モードの活用例をいくつか紹介します。

メロディ+メロディディレイ

アルゴリズム4を使用したOP1,2でメロディ、OP3,4でメロディのディレイを鳴らすパターンです。直列の変調が2組あるので、ある程度音色の幅を残しつつ、チャンネルを1枠増やす使い方です。
音色はOP1,2側、OP3,4側共に同じパラメータとするのが望ましいですが、フィードバックを掛けたり、違う音色にしてもディレイ感は損われないかなと感じます。

サンプルモジュール (.btm)
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ALG.4は他にもメロディ+ベースやサブメロディ、和音の一部を担当、などなど様々な組み合わせ方が考えられると思います。

セブンスコード(4和音)

アルゴリズム7を使用して全て1オペレータで発音し、FM3chのみでセブンスコード(4和音)を表現できます。
音色はサイン波となり、エンベロープのみとなってしまいます。とにかくチャンネルを稼ぎたいが、音色はサイン波で良い、という限定された用途の使い方です。

サンプルモジュール (.btm)
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ハイハット+キック+シーケンス

アルゴリズム6を使用して、フィードバックが使えるOP1,2側でハイハット(クローズ、オープン)、OP3でサイン波のキック、OP4でサイン波のシーケンスを鳴らします。音色切り替えのサンプルです。

サンプルモジュール (.btm)
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非整数次倍音の音色

ここまでの使用方法は、FM3chだけで複数ボイスを鳴らす為の説明をしてきました。もう一つの使い方として、非整数次倍音の音色を作る事ができます。

FM音色パラメータのマルチプル(ML)は整数倍の周波数になるように設計されているのですが、効果音やエフェクトサウンドなどの非整数次倍音を含む音程感の薄い音色を作る事ができます。(効果音モードと言う名前からは、本来の想定される用途はこちらでしょうか)

ノート入力の際にキャリアとモジュレータで違うノートを入力するだけです。アルゴリズムも全ての種類が使用できると思います。

サンプルモジュール (.btm)
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最後に

FM3ch拡張モードはOPN系にしかない機能でOPNを使用した事がない方には馴染みが薄い機能のように感じていて、まだまだ試行錯誤の余地があるのではないかと思います。また、SSG-EGとの組み合わせなどにより新たな使い方が出てくる事を期待したいです。