modern tracker & traditional chiptune

trackerとchiptuneのツールに関する覚え書き

BambooTracker 便利な機能とトラッカー特有の概念について

チュートリアルでは打ち込みに必要な最低限の機能説明に留まりました。チュートリアル内では説明しきれなかった便利な機能や、トラッカー特有の概念を説明していきます。
BambooTrackerを元にして書いていますが、他の各種トラッカーでも同じ場合が多いので流用できるものもあると思います。

エディットステップ(Edit Step)

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パターンエディタでノート、インストゥルメント番号、ボリューム、パターンエフェクト、DELキーを入力した際、カーソルが下に進むステップ数を表します。(デフォルト値は1)また、カーソルキーによるカーソルの移動がここで指定したステップ数毎の移動になります。
トラッカーによって表記が異なり、単にStepやAdd.などと表記される場合があります。

例えば、4つ打ちキックのノートを入力する際に、エディットステップを4にして入力すれば素早く入力できます。8分刻みのハイハットの入力はエディットステップを2にする事で素早い入力が可能です。この際、[キー入力繰り返し]がONであればノートキーを押し続けるだけで入力が完了します。

また、エディットステップは0にする事もでき、この場合、ノート入力でカーソルは動かなくなります。音程を確認しながら入力するのに適しています。(筆者は基本的にエディットステップ0で入力しています。)
 

パターン上のインストゥルメント一括置換(Replace Instrument)

インストゥルメントAでフレーズを打ち込んだ後で、この音色は 別のインストゥルメントBの方が良かったな、といった場合に、A→Bへインストゥルメントを一括して置換することが出来ます。

変更したいインストゥルメントを選択しておきます。
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インストゥルメントを変更する範囲を選択して右クリックメニューの[パターン] - [インストゥルメント置換]を押しましょう。
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選択範囲のインストゥルメントが04に置換されます。

トラッカーによっては直接インストゥルメント番号を指定できたり(OpenMPTとか)、全てのパターンを対象に詳細な条件を指定して置換できたりするようなもの(Renoiseとか)もあります。


補完(Interporat)

パターン上の値(ノート、インストゥルメント番号、ボリューム、パターンエフェクト)に対して、範囲選択した開始位置の値から終了位置の値まで、数値を等間隔に補完してくれる機能です。ノートを変化させたり、ボリューム値やパターンエフェクト値を徐々に増減する用途で使用します。

ボリュームを徐々に増やしていく場合を例に説明します。
開始位置と終了位置の値を入力しておきます。
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範囲選択して
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右クリックメニューの[パターン] - [補完]を選択します。
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間にあるステップのボリュームが開始値から終了値まで等間隔で補完されました。


BambooTrackerでは、範囲選択中にある全ての要素に対して補完を試みるようです。
範囲選択中の任意の要素を選択できるトラッカーもあります。

ミックスペースト(Mix Paste)

通常の貼り付けは、空行は空行として貼り付けられますが、ミックスペーストでは、貼り付け先にノートがあれば元のノートが優先されてそのまま残ります。元のデータと貼り付けるデータをミックス(マージの方がイメージしやすいでしょうか?)しながら貼り付ける機能です。
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通常の貼り付け
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ミックスペースト
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用途としては、単一チャンネルでエコー効果の打ち込みをする際に重宝します。

Tick(ティック)とは

トラッカーは1行(ステップ)を演奏する間に複数回処理の割り込みが発生します。その割り込み1回分の事をTick(ティック)と呼んでいます。
トラッカーを起動した時、大抵の場合、初期設定ではSpeed=6に設定されていますが、このSpeed値=1行に発生する割り込みの回数になります。Speed値=1行あたりのTick数であり、Speed=6のとき1行に6回割り込みが発生するという事になります。TPL(Ticks Per Line)と呼ばれる事もあります。
VSYNCタイミングのトラッカー(BambooTracker、FamiTracker、LSDJ等)では、1ティック=1フレーム(NTSC:1/60秒、PAL:1/50秒)で処理されます。

イメージ図
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パターンエフェクトの中でティック毎に処理されるものは、スピード値が変わると影響を受けます。

多くのトラッカーは、ティックとスピードという概念は共通しているので、一度理解してしまえば他のトラッカーでも応用できます。

32分音符単位で打ち込むには

デフォルトのスピード6から倍のスピード3にする事で、1ステップを32分音符相当として扱う事ができます。スピード3の場合、4ステップで8分音符、8ステップで4分音符、32ステップで1小節となり、パターン長64では1パターン2小節の長さとなります。1パターンを4小節としたい場合はパターン長を倍の128にしましょう。

途中までスピード6で打ち込んでいて、部分的に32分音符が必要になった場合は途中でパターンエフェクトのスピードチェンジ(0Fxx)を使用してスピードを変える事もできます。

スピードを倍にした際や半分にした際には、既に打ち込んだノートに対して拡大(Expand)や縮小(Shrink)機能が役に立ちます。

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3連符を打ち込むには

スピード6の場合、1ステップ=16分音符=6ティック、4ステップで4分音符=24ティックとなります。
3連8分音符の場合、24ティック÷3で8ティックづつ発音すれば3連8分音符になります。
8ティックづつノートを入力するには、パターンエフェクトのノートディレイ(0Gxx)を使用します。ノートディレイはティック単位でノートの発音を遅らせる事が出来ます。

スピード6のとき、2ステップ目に0G02、3ステップ目に0G04を入力すれば8ティックづつ発音されることになります。

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異なる長さのパターンを作成するには

BambooTrackerは全てのパターンがパターン長で指定した長さに固定されます。パターン毎に長さを変えるには、パターンエフェクトのパターンブレーク(0Dxx)でパターンを短くすることが出来ます。
トラッカーによってはパターン毎にパターン長を変更できるものがあります。

曲をループしないようにするには

演奏がオーダーの最後まで到達するとオーダーの最初に戻りループします。ループさせないようにするには、パターンエフェクトのソングエンド(0Cxx)で曲を停止することが出来ます。

グルーヴ(Groove)

グルーヴとはシャッフルの事で、跳ねたリズムの事を指します。
グルーヴ、シャッフルテンポ、ファンクテンポ等色々な呼称があります。
トラッカーではこの跳ねたリズムを表現するのに、パターンエフェクトのスピードチェンジ(0Fxx)でスピード値を偶数行と奇数行で変えるテクニックが昔からあります。

スピード6相当の速度は、偶数行をスピード7、奇数行をスピード5にすることで、跳ねたリズムを表現することが出来ます。
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偶数行と奇数行のスピード差を大きくすればするほど跳ね感が強くなります。

しかし、この方法ではパターンエフェクト1列分を占有してしまうのと、全てのオーダーに同じ入力をしなければなりません。BambooTrackerではこのスピード値の入力をグルーヴ設定という機能に切り離して実現する事ができます。

メニューバー[モジュール] - [グルーヴ設定]でグルーヴ設定画面を開きます。
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最初の設定では6 6というシーケンスが用意されています。これは偶数行スピード6、奇数行スピード6という意味になります。この設定を偶数行スピード7、奇数行スピード5にしてみましょう。
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赤線入力エリアに7 5と入力して、ENTERキーを押してください。これでグルーヴ番号0が偶数行スピード7、奇数行スピード5という設定になりました。

グルーヴを使用するには、ソング設定のグルーヴにチェックを入れて、グルーヴ番号を選択します。
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パターンの途中でグルーヴを変更する際はパターンエフェクトの0Oxxでグルーヴを指定できます。xxはグルーヴ番号です。

エコーバッファ(Echo Buffer)

BambooTrackerは、パターンの発音ノートを現在位置からさかのぼって3音まで保持しています。エコーバッファにアクセスすることで、x個前の音という指定でノート入力することができます。
エコーバッファを使用するには^キーでノートを入力します。^キーの入力時のオクターブが0のとき、1個前、オクターブが1のとき2個前…といった感じになります。
^キーで入力したノートもエコーバッファに格納されます。
下記のパターンではFM1とFM2が同じ結果になります。
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用途としては、単一のチャンネルでエコー効果を表現する際に使用されます。
エコーバッファは0CC-FamiTrackerより導入された機能です。